ブランド対談 #02

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ブランド対談 #02

ブランドを立てる「MPDP」理論 vol.3

グローバルブランドとして立つには

 

高崎氏: 今弊社は「エンジニア」という社名よりも「ネジザウルス」のほうが有名になって、コーポレートブランドよりプロダクトブランドのほうが大きい状態ですね。

でも最近はネジザウルスというブランドに引っ張られてか、コーポレートブランドも上がってきてるような気がします。

ネジザウルスが載ってるエンジニアさんのカタログが欲しいといった声もいただくようになりましたから。やっぱりブランドって製品と繋がってるんだなと感じます。

陶山氏: 「シルバーブリット(銀の弾丸)」という言葉があるんですが、いわゆる企業のブランドを立てる切り札になる商品またはエース級のブランド。たとえばシャープでいえば「アクオス」だったり、ソニーでいえば少し古いですが「ウォークマン」。ネジザウルスはエンジニアさんにとってシルバーブリットのような存在ですね。

 

そこから、そのシルバーブリットに負けない「エンジニア」というコーポレートブランドを、どう立てていくかが今後の課題になるでしょうね。やはり会社である以上、製品の他にも、社員や経営トップの「人としてのブランド」など、トータルで見た企業のブランド価値を上げることも必要ですから。

高崎氏: この企業といえばこの製品だとわかるようなことですね。次に出す商品も、非常に強い弾丸でなければいけないということですね。

陶山氏: ええ。シルバーブリットを持っていると、次に出す商品にどれだけのパワーがあるかが重要なんです。例えばシャープもアクオスの次に、アクオスを凌ぐものを出そうとしたんですが、実際はなかなか「シャープ」を牽引するような商品になってない。逆に製品ブランドを出し続けることで、コーポレートブランドが商品の名前で霞んでしまうこともあります。

高崎氏:  何か1つプロダクトブランドがあればいいというわけじゃないんですね。製品ブランドとコーポレートブランド、両方必要になる。

陶山氏: ええ、両方必要なんです。商品にブランド力があればいいというのではなく、企業としてのブランドが立っているかどうかが企業ブランドの価値なんです。それはやはり「株式会社」ですから、その企業の株主をはじめとするステークホルダーにとっても重要なことですね。
高崎氏:  そうなんですね。

陶山氏: ええ。松下は「パナソニック」とラインブランドの名前に社名を変えましたね。グローバルで強いブランド名に社名を変更するのも一つの選択ですけどね。

高崎氏:  株式会社ネジザウルスとか(笑)

陶山氏: そうなってしまうと「鉄腕バサミ」はどうなるか(笑)


高崎氏:  そうですね(笑) 弊社は、クールでイノベーティブな機能・デザイン・遊び心、この3つを持った工具メーカーとして世界に売っていこうというミッションを持っているんです。
そこにコーポレートブランドをどう立てるかと考えると、ネジザウルスって、クールでイノベーティブな製品だよね、ちょっと遊び心もあるし。じゃあ、そのネジザウルスを作ったエンジニアって会社なら、次はきっとこんな感じの製品を出してくるだろうな、とイメージしてもらえることが大事なんですね。

陶山氏: そうなんです。その企業のパーソナリティだったり、企業風土や文化もあるでしょうけれど、一番大きいのは、あの高崎社長だったらきっと素晴らしい商品を出すに違いないと期待されることです。S.ジョブズもユニークでキラリと輝くAppleという会社を背負ってる「人としてのブランド」でしたから。

高崎氏:  あの大きな企業でも人がブランドなんですね。

陶山氏: そうです。会社というのは最終的には「人」。経営トップがどういう人物か、つまりブランド・パーソナリティのパワーが企業のシルバーブリットとして発信する力を持ってくるんです。

高崎氏:  トップがブランド力を持つことって日本でなかなかいないですね。大企業でも少ない。

陶山氏: ええ。そういう「人としてのブランド力」を考えていくのも重要なことですね。
高崎氏:  僕は、企業が打ち出すミッションってその企業のブランドイメージですから、経営者自身のイメージと商品イメージは合っていたほうが良いんじゃないかと思うんですね。社長のキャラクターと想いがそのまま製品に反映するといったような。

陶山氏: 経営トップ自らがプロモーションやセールスに打ち出ることをトップセールスといいますが、やはり「エンジニア」を代表する経営トップ、高崎社長のパーソナリティが企業や製品以上に「立つ」ことが大きな要素かもしれませんね。

逆にいうと、企業や製品だと形になりますから、そこにポテンシャルがあまりないんですね。つまり伸びしろがない。人であればどんどん成長し続ける存在ですから、次々と新しいアイデアやビジョンが生まれてくる。そういう意味では、経営トップのブランド力を上げることが会社の成長を一番後押しするものになるのかもしれません。
 
経営トップがイノベーティブでクリエイティブな考え方をしなくなると、いわゆる大企業病といわれるような、面白くともなんともない金太郎アメのようになって、新しいものがなかなか出てこない。いわゆる硬直した企業風土になってしまいます。

経営トップ自らが常にカオスのような状態を作りながら、何かやってくれるんじゃないかと周りへの期待感を作り上げること。ブランドとは、期待と満足を取り結ぶものですが、単なる期待だけでなくて、期待以上のものを提供してくれるという「驚き」がないとヒット商品に繋がらないんですね。

日清のカップヌードルのような全く新しいもの、パラダイムシフトを起こすことによって、常になにかやってくれるという期待感が生まれてきます。

高崎氏:  なるほど。ところで、陶山先生のブランド戦略経営研究所の会員企業には、中小企業の方もおられますか?

陶山氏: 当研究所を立ち上げた大きな目的の一つは、関西、それも地元大阪で、ブランドってなかなか縁遠いものとか、自分たちとは関係ないものとか、逆にマーケティングってプロモーションの手段でしかないと思っていたりと、企業のミッションとビジョンをブランドと繋げて考えることがなかった中小企業の方々に、ブランドというインサイトを考えてもらおうということでした。
この点ではブランド戦略経営研究所の会員でもあるメーカー、流通とかの比較的大きな企業や、調査企業、広告代理店などでは、ブランドやコミュニケーションということをよく考えておられるので、その経験値を参考にしていただきたいと思っています。

韓国や中国、台湾などアジアの企業が急成長する中で、やはり日本、関西を元気にしなくちゃいけない。大阪ならやはり中小企業に元気になってもらわないといけないと考えているんです。


高崎氏:  仰る通りですね。

陶山氏: 高崎社長の「MPDP」の考え方と同様に、当研究所の掲げる「経営・マーケティング・知財」の三位一体を推奨しながら、このグローバル化の嵐の中をどう立ち向かっていくかを会員企業と一緒に考えていこうとしています。
特に東南アジアとの関係になると、やはり価格競争がシビアになることもあって、どううまく対応していくかを考えなければいけないと思うんですね。

企業の例で言えば、PCですと、レノボグループという中国メーカーがIBMのPC部門を買収して、今やヒューレットパッカードを抜いてナンバーワンになった。でもノートPCですから、タブレット端末であるiPad等が出てきてる今、非常にシビアな競争になってくる。その中でブランドをどう立てていくかは、レノボとはいえ厳しいと思いますね。やや価格競争で勝っているところがあって、ブランドとしてはまだまだ弱いんじゃないかと思います。

高崎氏: 私もヨーロッパやアメリカへは、このネジザウルスのビジネスを展開しているんですが、中国にはまだそれほど力を入れていないんです。 もちろん中国でもパテント出願していますから、何かあっても対抗できるんですが、やはりその前にまずブランド化が大事だろうと思っているんです。

仮にコピー品が出てきたとしても、いや、もともと本家はこっちだろうと、中国の人たちにもわかるようにしておきたいんです。その上で中国進出しようと考えています。それもブランドを意識した戦略ということになりますよね。

陶山氏: ええ。そうですね。グローバルブランドとして国際競争力を持つためには、まず進出先の国や地域に認知度があるかどうかが、勝ち負けを左右することになってきます。

どんどんコピーが出てきたり、Appleのように先に中国にパテントを取られてしまっていた、ということのないように、知財で防御することはもちろんですが、如何にプロモーション等できちんと社会的に認知させ、ブランド・ロイヤルティを構築することが極めて重要ですから、そうしたブランドを意識した戦略は大事なことです。

 

 

 

 

PROFILE

 

 

 
陶山 計介 高崎 充弘
Keisuke Suyama Mitsuhiro Takasaki
関西大学商学部教授 代表取締役
一般社団法人 ブランド戦略経営研究所 株式会社エンジニア
1950年 岡山県生まれ

京都大学 大学院経済学研究科
博士後期課程単位取得。博士(経済学)

研究分野
ブランド・マーケティング。

学会・研究会活動
日本商業学会前会長
日本広告学会元理事
日本広報学会元理事
一般社団法人 ブランド戦略経営研究所理事長

主な著書・訳書
『ブランド・エクイティ戦略』
(共訳 ダイヤモンド社 1994年)
『ブランド優位の戦略』
(共訳 ダイヤモンド社 1997年)
『バリュースペース戦略』
(共訳 ダイヤモンド社 2004年)
『マーケティング戦略と需給斉合』
(中央経済社 1993年)
『日本型ブランド優位戦略』
(共訳 ダイヤモンド社 2000年)
『マーケティング・ネットワーク論』
(共編著 有斐閣 2002年)
『大阪ブランド・ルネッサンス』
(共著 ミネルヴァ書房 2006年)等

常に現場に目を据え、トヨタ、リクルート、JH、ハウス食品、イズミヤ、大阪府等多数の企業、各種団体の幹部研修も行い、産学交流を推進している。 文科省、経産省等の専門委員や大阪ブランドコミッティ・プロデューサー等、学外活動多数。

英国エジンバラ大学マネジメントスクール
客員教授(2002年)

1955年 神戸市生まれ

東京大学 舶用機械工学科卒業

1977年 三井造船(株)入社
ディーゼルエンジン技師として10年間勤務
1983年 米国レンスラー工科大学 修士課程卒業

1987年家業の双葉工具株式会社入社
2004年代表取締役社長就任
2013年創業65周年を迎える

主な受賞履歴:
平成21年
グッドデザイン賞
ネジザウルスGT

DIY協会会長賞
ネジザウルスGT

平成22年
近畿地方発明表彰
「大阪府知事賞」
高崎充弘(ネジザウルス)

大阪ものづくり優良企業賞 
㈱エンジニア

大阪ものづくり発明大賞
高崎充弘(ネジザウルス)

平成23年
iF product design award 2011
受賞(Neji-SaurusGT)ドイツ・ハノーバー

大阪産業創造館
サンソウカンアカデミー大賞 2部門受賞
㈱エンジニア

発明大賞「発明功労賞」
ネジザウルスGT

中小企業優秀新技術・新製品
「優良賞」ネジザウルスGT

ホビー産業大賞受賞
ネジザウルスGT

全国発明表彰
「日本商工会議所会頭発明賞」
受賞 ネジザウルスGT

知的財産管理技能士表彰
(第一回)受賞 高崎充弘

平成24年
文部科学大臣表彰
「科学技術賞」(技術部門)
高崎充弘

知財功労賞「特許庁長官賞」
㈱エンジニア
関西大学
陶山研究室
http://www2.itc.kansai-u.ac.jp/~suyama/

一般社団法人 ブランド戦略経営研究所
http://www.brand-si.com/
URL:http://www.engineer.jp
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2012/08/08

ブランド対談 #02

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