ブランド対談 #01

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ブランド対談 #01

グローバル・マーケティングとブランド戦略 日本企業の10年(2)

「ブランド」と企業トップマネジメントとの距離感

 

大石氏: 僕が2004年に「グローバル・ブランド管理」という本を出したときに共著者が調べたんですが、ブランド管理の組織ができたのは多くの企業で2000年前後なんですね。

ところが組織の中をいろいろ調べてみるとそんなに力がない。組織はできたけどマネジメントという点ではやっぱりいろいろ問題がある。まあ企業によって温度差がありますけど。

ところが欧米企業には、ブランド管理室とかブランド推進室なんてほとんどないんですよ。

陶山氏: あ、そういうのない?

大石氏: ええ、ないんです。なんでかというと、欧米企業ではトップマネジメントから現場まで、ブランドを中心に経営が成り立っているんです。

 

もちろん欧米企業には、CMO(チーフマーケティングオフィサー)はいて、日本企業にはほとんどいないんです。 日本企業の場合、ブランド重視という考えをしてこなかったものだから、敢えてそういう組織を作らなければならなかったんだと思います。

当時インタビューに行ってみると、本当は社長直轄にブランド推進室を作りたかったんだけど、実際には広報の中に作られてしまって、予算も権限も限られていたというのが結構多かったですね。

陶山氏: ある企業のブランド戦略に携わっている方の話を聞いたときに、ブランド戦略部門がトップ直轄下に置かれ、企画や商品開発、広告や広報といった各部署を全社横断的な形で繋げてマネジメントされていました。

ただそこでもやっぱりスピリッツが込められてないというか、制度や組織といった「形」はあるんだけど全社的なムーブメントになってなかったという反省もなされていたようです。
大石氏: もちろん企業がそうした組織を作って、自社のブランド管理を推進していこうというのはいい傾向だと思いますから、僕らとしてはどうブランド管理を推進していくかということ応援する立場になるんだけど、彼らが悩んでいるのはそれを実質どう業務に落とし込んでいくかなんですね。

ブランド構築に関する細かいデータを見せてもらったりするんですけど、ある大手家電メーカーの場合、実にそれが面白いんですよ。

たとえばブランド構築となると、いい製品作っていい広告やってと、「表のブランド構築」に精を出すんだけど、その企業はむしろマイナス面を徹底的に調べるんですね。何が足を引っ張っているのかを調べる。外部の調査機関を使って調べてみると、同社のある部門のサービスが悪いということが出てくる
それを徹底的に改善する。VOC(お客様の声)あるいはVOS(サービスマンからの声)を調べて、それを商品開発に活かして品質を上げていく。品質とサービスの両方を同時に改善された。

この地道な作業をいつからやったんですかと聞くと、2005年に始めたそうです。顧客満足度のランキングではかつて最下位だったものが、2008年から3年連続ナンバーワンになったそうです。しかし2008年ですよ。


陶山氏: 3年もかかってるんですね。


大石氏: その企業がブランド構築を始めたのが2000年頃だったとして、効果が出るまでにはものすごい時間がかかっているわけです。

多くの日本の企業の場合、頭ではわかっているけれど、それを実務業務にどれだけ落とし込んでいるかというと甚だ心もとない。大企業でさえね。もちろん以前から意識している企業はあるにしても、グロ-バルな点で見ると、その弱さは明らかに出ていますね。それがブランドランキングの低下です。

陶山氏: ある大手家電メーカーでブランド戦略に携わっておられて、新興のアパレルメーカーに移られた方のお話を伺う機会が最近ありました。以前の会社はグローバルブランド企業でしたが、組織が巨大化していたこともあって意思決定のスピードが遅かったようです。日本型企業社会ではポピュラーかもしれませんが。

でも今の会社はすごくフラットだと仰るんですね。常に経営トップが即断即決する。それが良いか悪いか別にして、そういう経営におけるスピード感って大事です。トップのブランドに対する考え方が広報や企画、営業、製造など、他の部署に伝わりやすくなっているようです。
そうなると経営トップのもとで、全てがグローバルに展開されるようになってくる。もちろんマーケティングあるいは組織のありかたも重要ですが、ブランドを戦略的にやるためにはなによりも、経営トップのリーダーシップが重要だと思いますね。

大石氏: 先ほどの家電企業の取締役の方は、幸いにも当時の会社の規模が小さかったから、品質とサービスの両方を見ることができた、と仰るんですね。

もっと規模の大きな企業だったら、大きすぎて無理だったでしょうねと。今はその仕事を離れておられるけれど、本社には品質とサービスを一人がみる体制は変えてくれるなと伝えてこられたそうです。

そういうトップマネジメントがブランド意識を強く持ってるかどうかっていうことなんですね。にも拘らず、いくつかの企業の社長交代をみてもね、どこまでわかってるかなと今でも僕は懸念をもっています。
陶山氏: インナーブランディング(対内的ブランド戦略)とアウターブランディング(対外的ブランド戦略)というのがあって、企業をとりまくステークホルダーを意識しながら、どうやって企業全体にブランドのDNAやアイデンティティを浸透・達成させるかという問題がありますね。

経営トップの継承の在り方を見ていると、やはり内側のロジックが一番プライオリティが高いんですね。総務とか企画とか財務の出身の方がトップになるケースが多い。広報部門の出身といえば、日本を代表する自動車メーカーが初めてですね。

企業内外のコミュニケーションをベースにしながら企業の価値やビジョン・ミッションを考える発想って特に日本の場合は少ないですね。

 

 

 

 

 

   

 

 

2012/07/08