ブランド対談 #07

HOME» ブランド対談 #07 »老舗ブランド企業としてのブランドパーソナリティ vol.2

ブランド対談 #07

老舗ブランド企業としてのブランドパーソナリティ vol.2

これからのブランドパーソナリティ


陶山氏:  スポーツで培ってきた技術やクラフトマンシップ、クオリティがスポーツを愛する人にとってどういうバリューを提供できるのか。他の競合にできなくてなぜミズノができるのか、というところかと思うんです。

スポーツ飲料のポカリスエットは、もともと発汗によって失われたミネラルを補給する点滴薬から出てきた商品ですが、それを風呂上りやスポーツ後のリフレッシュウォーターとしてポジショニングしましたね。

またトヨタのランドクルーザーはもともとオフロード、つまり悪路を走るための技術水準を求められて作られた車ですが、それをオンロード、日常生活のちょっとした買い物や、家族揃ってレジャーに行くような用途に使えるようにした。
つまり専門的な技術で培ったことが日常でも効果を発揮するんだ、価値があるんだというような、何かわかりやすい言葉で語るブランディングなりイメージ戦略のコミュニケーションを展開されると、ガチガチの男くさいスポーツのイメージも変わってくると思います。

北野氏:  そうですね。夏用に着れば涼しい「アイスタッチ」という素材と、冬には暖かい「ブレスサーモ」という素材がありまして、今タレントを使ってランニングの楽しさや商品の機能の良さをアピールしています。

そうした一般生活にもお使いいただけるようなものをどんどん商品化して出してはいるんですが、どちらかというとミズノは競技用のイメージが強いのか、あまり積極的に訴求できていないのでしょうね。

陶山氏:  ユニクロが東レと提携して行った「ヒートテック」や「シルキードライ」のような、誰もが耳にする言葉があると良いですね。

北野氏: 発熱素材といえば「ヒートテック」が代名詞になっていますが、ミズノはそれよりずいぶん前から、もっと効果のある発熱素材を出しているんですけど(笑)残念ながら我々の弱い所なのか、消費者が使いやすいところまでになってないんですね。
どちらかというと機能性を追及していますから価格も高くて、開発当時は三千円位でした。ヒートテックは千円位で手ごろな買いやすい価格ですからこの差は大きく、機能の差はなかなか認めてもらえない。消費者に広げていくには、もっとこなれた価格にしないと難しいのでしょう。

陶山氏:  その商品の生産は海外で?

北野氏:  素材の原材料は国内ですが、製造は海外ですね。

陶山氏: コスト競争力はあるんですよね。

北野氏:  ただユニクロさんとは数量も機能も違いますから。機能を落として価格を落とせば良いのかもしれませんが、そこがうちの不器用なところかもしれません。
陶山氏: ブランドパーソナリティには、誠実、素朴、洗練、能力、刺激といった5つの要素があるのですが、その中で「誠実」「能力」といったミズノのコーポレートブランドとしての良さを逆にもっとアピールされると、価格劣位の部分をカバーしてコミュニケーションできるかと。

消費者は企業の持つブランドパーソナリティを選ぶという調査結果もありまして、少し品質を落としても、そのブランドなら充分だということもあります。ミズノが作っているものなら、他社ものより高い技術で作られているだろうといったようなところですね。

北野氏: 企業のDNAというものかもしれませんが、どちらかというとミズノの場合、用具、つまり野球のバットやグローブといったギア的な商品が得意だったという歴史があります。ギア的な商品はモノさえ良ければ消費者に買っていただける。またそういう時代にずいぶん慣れてしまっているところもあります。

ただそこから、アパレルといったソフトな商品となりますと、モノの良さより如何によく見ていただけるかとか、如何に良い印象を持ってもらえるかといった働きのほうが大事になってきます。
今まで我々が育ってきた歴史もあってなかなか変わり切れていないところがありますが、力を入れはじめています。

陶山氏:  以前学生が行ったスポーツシューズの調査で、ナイキ、アシックス、アディダスとミズノの中ではやはり、アシックスは機能が良く日本人の足に合わせているから安心して履けるけどデザインが乏しい。

逆にアディダスはデザイン力があるし軽量であったりと機能性も信頼性も高い。ナイキはシンプルでデザインも良いんだけれど、日本人の足の体型に合ってないと。そこでミズノは機能もデザインもいま一つ。

ランバードのインパクトは強いけれど、その機能やデザイン性がはっきり見えてこないという結果があったんですね。それを見るとまだまだ打ち出しが充分できてないようなところもあるんじゃないかと。
北野氏:  陸上競技で100m走るということは普通のシューズとは違いますし、普段履きとなるとデザインや価格が訴求されます。たしかにその比較となると、強く訴えるものがないかもしれません。どこを狙うかだと思いますがパフォーマンスが必要な部分のシェアや評価を捉えたら、アシックスもミズノも評価は高いはずです。

そこが強いのであれば、もっと強く広く展開していくべきだということは仰るとおりなんですが、値段を安くしようとすると数をたくさん作るか、品質を落とすかになりますから難しい。我々は品質を落としたくないし、数もそんなに作れるわけでない。そこが中途半端にならないことが大切だと思います。

陶山氏: 若い人がスポーツシューズと接する販売店といえばABCマートなどの量販店が多いので、いわゆるスポーツ専門店にはなかなか足を向かない。専門的にスポーツをされている方は逆に直営店に行く。STPマーケティングから見てお客様は、最初から分けている。それはそれでひとつの明確の戦略なんじゃないかなと思います。
北野氏: でもそういったところまでこなれた商品を開発していかないと、今後の広がりは少なくなるだろうということも理解しています。

ただどこまで幅を広げるか、どこを重点的に特殊していくかということになりますが、できればコアなシリアスなところを重視してお客様に買っていただくというのが理想的な形かと。

陶山氏: お客様のプロフィールといった求められる期待やニーズに応えながら、他社よりも一段高いところで常にミズノらしさを維持し、より優れたスポーツ用品、スポーツシーンを愛する人たちに対して価値を提供する。そこは外したらいけないと思いますね。
北野氏: 野球ならイチロー選手や松井選手が使っているのを見て、かっこいいな、自分も同じものを使ってみたいなと思っていただけることが、ウチとしては一番マッチしますし、ゴルフでもプロの選手がミズノの商品を使って優勝すれば、あの商品は良いなと買っていただく。そこが我々の得意とする部分かと思います。

でもそこから派生しても野球やゴルフが一般的な趣味にはなり難いので、たとえばゴルフウェアが、もっとみんなが着たくなるウェアになるといった広がりを求めていくべきかとは思います。

しかしそこにはリスクもありますし、バブル経済が破綻して以降厳しい環境にはありましたから、我々としては着実な路線を進めようというのが基本的な考え方で、そこは無理はしないということでここまで来ています。ただここから先は少子化になってスポーツ人口も減少しますから、スポーツしない人や高齢の方々になにを提供していくのかがこれからの課題でもあります。

陶山氏: 小売業や流通業の企業をヒヤリングしますと、グランドジェネレーションと呼ばれるシニアや高齢者というのは、年齢で区切ってしまって必ずしもマインドではないんですね。
自分達は年はとってるけれど気持ちは若いんだと。あんまり年齢を言ってほしくないし、活動力とかチャレンジ精神は若い人に負けたくないという。そういうアクティブなシニアのマインドにどう応えていくことが、これから重要なテーマになるかと思います。

北野氏:  年をとると足腰が弱くなってきますから、その機能をいかに補うか、腰や膝を如何にサポートするかとなると、そこはスポーツで培ってきた技術が活かされる部分だと思うんですね。

もともと我々のものづくりというのは、より早く走るとか、より高く飛ぶといった人間の機能を促進するために研究開発した商品を提供していますので、そういう意味では同じ考え方ではないかと思っています。

陶山氏:  なにか具体的な商品はありますか?
北野氏: バイオギアという、バレーボールの選手が膝や肘をサポートするパッドがあるのですが、それを改良して高齢者向けに商品開発しているものがあります。

陶山氏:  高齢者の健康的で安心安全なライフスタイルを提案する手段としては、スポーツの延長線上にあっても、スポーツではない切り口が欲しいところですね。「スポーツ」となると何か日常生活とは少し距離があるような部分がありますから。

北野氏: 難しいのは「どこを向いて売るのか」という問題だと思います。そういった商品をスポーツ用品店に置いてあっても高齢者の方は買いに来られない。今の高齢者の方はどこで購入されてるかというと通販なんですね。実は今「実は! 腹筋くんライト」という商品がありまして、テレビを見ながら腹筋ができるという座椅子ですが、これが30万台も売れたヒット商品になっているんです。

陶山氏:  昔「ぶらさがり健康器」というのがありましたね。あんなイメージですか?

北野氏:  そこまではいかないですが、通販で30万台というとなかなかのヒット商品なんです。普段家の中でじっとしてるより腹筋を鍛えたいという方が買っていただいています。こうした商品はまだ単発ですが、今後はもっと打ち出していきたいですね。