ブランド対談 #07

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ブランド対談 #07

老舗ブランド企業としてのブランドパーソナリティ vol.1

今回のブランド対談は、一般社団法人 ブランド戦略経営研究所 理事長、関西大学の陶山計介教授と、ミズノ株式会社 常務取締役 北野周三氏との対談です。世界中のスポーツブランドがPR戦略を展開するオリンピック。日本のメダル史上最多の38個を獲得したロンドンオリンピックで、日本代表選手団オフィシャルスポーツウエアを提供されたミズノ。

これまでもオリンピックに多大なる貢献をされてきた同社は、ロンドンオリンピック期間中、ロンドン市内に自社ブランドPR「ミズノパフォーマンスセンター」を設置するなど、グローバルブランド戦略に力を入れられました。スポーツブランド企業としてのオリンピックとは何か、ユーザー市場へどう落とし込むのか、さらに今後同社のジャパンブランドとしてのあり方を語っていただきました
この対談記事はWEBマガジン「プロフェッショナル談」との共同企画です。
取材/山部 香織(株式会社neo) 撮影/菅野 勝男(有限会社LiVE ONE)  
 


オリンピックの位置づけとグローバル戦略


陶山氏:  北京オリンピック後、ミズノの中国市場での業績が振るわなかったという原因としては、競合と言われるナイキ・アディダスといったグローバルブランドや、李寧をはじめとする中国のローカルブランドが、積極的にブランド戦略や投資活動をされていたということなのか、それともミズノ自体の事業展開に何か問題があったのでしょうか。

北野氏: ミズノは1924年からオリンピックにはかかわってきました。我々の中でオリンピックというのはやはり、ミズノの商品を選手が使うことでパフォーマンスが上がり、商品の優秀性や機能性を証明するということが目的の一つです。

もう一つはマーケティングの一環としてミズノブランドを広くアピールしていくこと。これは1924年から現在まで、その考え方は変わらずに展開してきています。従って北京オリンピックだからとか、ロンドンオリンピックだからとか、それぞれ違う目的でやっているわけではありませんし、その基本的なスタンスは次のブラジルでも変わりません。
北京オリンピックの場合我々は以前から現地で商売しておりまして、その頃の中国は経済発展しながら消費もどんどん伸びていく時期でもありました。(オリンピックを機に)ミズノブランドを拡販するための位置づけもありました。

そこにはもちろん、ナイキやアディダスという競合グローバルブランドも力を入れてきますし、それに合わせて中国のローカルブランドも力をつけてきたこともあり、2008年にはもう溢れるほどの商品が投入されて、市場は供給過剰になってしまったということもあります。
陶山氏:  供給に需要が追いつかなくなった?

北野氏: ええ。グローバルブランドは我々とケタ違いに商品をドッと投入しますから。ナイキほどになるとうまく商売されていたかもしれませんが、それ以外は在庫処分に随分苦労したと思います。

元々オリンピックでブランドを訴求するという目的と、実際の商売とは位置づけが違うんですね。よくオリンピックがあるとミズノさん儲かるでしょうと言われますけど、実際経費はかかっても、すぐに需要に繋がるわけではないんです。

需要にはじわじわ後から効いてくるといった位置づけであると考えています。それは今後も変わらないですね。
陶山氏: 「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」という御社の理念から、オリンピックに協賛あるいはサポートするというスタンスは変わらないということですね。

北野氏: ええ、創業者の頃からずっとそれは変わらないですね。

陶山氏:  経済成長やオリンピックを機に、中国でもスポーツマーケット自体が伸びてきたかと思いますが、供給過多になったことで他のグローバルブランドの強烈なインパクトに影響されたということでしょうか。

北野氏:  そうですね。中国では以前からナイキやアディダスは大きなブランドとして存在していました。そこでもミズノは中国のナショナルチームのスポンサーをしていた関係もありますし、ある程度知られたブランドではありました。
またある意味2大ブランドに飽きた頃に新しいブランドとして買っていただいたというところもあります。

そこにさらに新しいグローバルブランドやローカルブランドが入ってきたことで「弾かれてしまった」という表現が近いかもしれませんが、ミズノはそんなに大きな特徴のあるブランドではなくなってしまったかと思います。

陶山氏: ブランドのポジショニングとして、スポーツや機能性といった側面を重視するものと、レジャーやエンタテイメント、ファッション性などの側面を重視するものとありますが、スポーツマインドを持ったお客様に対して、機能や技術の優秀性、クラフトマンシップをアピールするということを考えますと、ナイキやアディダスに対しての差別化はされたかと思いますが。
北野氏: やはりナイキやアディダスは、販促やプロモーションに多額な販促費を使ってきますから、そこで競争するわけにはいきません。やはり「品質の良さ」を理解していただくことで、選手に使っていただくとかお客様に購入していただくことが中心だと考えてきました。

ただ、競技といったいわゆるシリアスパフォーマンスの世界だけでは市場はそんなに大きくありませんので、基本はビフォーアフターとして一般の生活にも使っていただけるような商品も販売していく必要もあるかと思います。

高齢者の方の体の機能低下をサポートするものであったり、動き易く冬でも暖かいといった企業のユニフォームやワークウェアなどの商品を開発していますが、それはあくまでも、過酷な状況を強いられるスポーツで培った、使い方や素材などを研究し蓄積してきたことをベースにしています。
陶山氏: ナイキは以前、雑誌の広告で「ナイキはファッションブランドではありません」と主張されました。それと同様にあくまでも「スポーツブランド」であってファッションではないということですね。

一般の方にも今、ジョギングやランニングが普及してきていますし、日常生活の中にいかにスポーツ用品を取り入れていくかを考えると、コアなスポーツをする選手やアスリートだけでなくもっと広いところにまで、スポーツマインドを普及できる可能性があると思います。

北野氏: よくわかります。今までは「スポーツする人」を中心に考えてきましたが、これからはスポーツが好きな方、自分はしないけどスポーツが好きな方、もしくはスポーツを見ることが好きな方など、そういう範囲まで対象を広げていかなければいけないと考えています。
ウォーキングやハイキングなどを楽しむ方も増えていますし、ゴルフもゴルフファッションが好きな女性も増えて、ファッションを楽しむためにゴルフをするといったこともあります。そういうファッションの需要も広いのですが、やはり浮き沈みは激しい。

うまくいけば得るものは大きいかと思いますが、やはりリスクも多い。バランスの問題かとも思いますが、我々としてはそんなに大きなリスクテイクはせずに堅実にいこうというのがミズノのカラーなんだと思いますね。