ブランド対談 #08

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ブランド対談 #08

トレンドのネクストステージを探る vol.1

今回のブランド対談は、一般社団法人ブランド戦略経営研究所理事長、関西大学の陶山計介教授と、パリ発世界15カ国22校のネットワークを持つ、ファッションデザイナー専門学校エスモードジャポン 大阪校 ディレクター 十三千鶴氏との対談です。 十三氏は阪急百貨店の顧問コーディネーターとして、この度の阪急百貨店のリニューアルにもMD(マーチャンダイジング)提案される等、ファッション業界の第一線で活躍されています。

もとよりライフサイクルが早く激しいファッション業界にも、昨今これまでにない流れが出てきていると氏は仰います。次のトレンドを見極めるために何をするべきか。そこに必要なブランド戦略とは。また次世代を担う若い人材を育成されているお立場からのメッセージもお話いただきました。
この対談記事はWEBマガジン「プロフェッショナル談」との共同企画です。
 取材・インタビュー/山部 香織(株式会社neo) 撮影/菅野 勝男(有限会社LiVE ONE)  

 

陶山氏:  ファッションビジネスのマーケティングは、通常のメーカーのマーケティングとの違いや特徴はありますか?

十三氏: 今の生活者つまり消費者の人たちは、衣食住すべてがファッションと捉えている人達が多くなってきていますね。

昔と違いこうした流れは基本どの業界でも同じだとは思いますが、ただファッションの業界の特徴と言えば、シーズンが年に2回あって、次シーズンはこういう色や素材・スタイルが流行るという全く変わってしまうんですね。

その一つはパリ・ロンドン・ニューヨーク・ミラノ等から発信される情報、いわゆるモデルがランウェイを歩くコレクションですね。それに基づいたトレンドと、もう一つはストリートから生まれてくるようなファッションと、日本独特ですがガールズファッション。

 

読者モデルのような人たちが、ショップの中で自分で好きなようにスタイリングして着る。それをお客様が見て「あれいいね、これいいね」とそのまま企画に持ち込まれて商品化していく。これがどんどん膨れ上がって一つのトレンドを作るという、この2つの流れが混在しています。

陶山氏: デザイナーやアパレル企業が情報発信源となってコレクションを企画し、その中から時代に合ったトレンドが生まれてくるというものと、着る側・使う側が自分たちのアイデンティティやパーソナリティに合ったファッションスタイルを考えて製品化されているもの。つまり上からと下からの両方の動きが現在のトレンドになっているということですね。

十三氏:  ええ。消費者の意見やアイデアといったマーケットイン発想が、プロダクト・ものづくりの中に入り込んできているというのが、今までとの大きな違いかと思います。

陶山氏: ファッションには独特のセンスや技術がありますから、素人がプロの世界に入り込んではたして本当に通用するのかと思いますが。にもかかわらず、必ずしも洗練されていないけれど流行の先端となっている。プロダクトアウトからマーケットインに変わってきていると。
エンタテイメントの世界でも、昔はプロフェッショナルな人がちゃんと存在していたけれど、今はほとんど素人と変わらない。生活感があるといえばあるんでしょうけど、レベルの差がわからなくなっていますよね。

十三氏: ブランド戦略の第一位は顧客のニーズに合うことですから、より新しいものを発信し、使う人が新鮮に感じたり、いいねと好んでもらえなければ成り立たない。

ということは今の消費者のレベルが、従来に比べてどんどん高くなってきていて、それを専門にする創る人・仕掛ける人たちとのレベルの差が非常に無くなってきているということです。

エンタテイメントにしても技術にしても、素人がもうすぐそこまで追いついてきていますから、今後の方向性を考えるとより専門性を高めなければ負けてしまいますね。
陶山氏: 今やお客様の方がもっと上を行っていることもありますからね。それのさらに上を行かなければプロに勝ち目はない。

十三氏: ええそうなんです。でもその専門性と言っても「ハイパフォーマンス」ということじゃないと思うんです。もっと好ましいとか、あるいは人の役に立つというような「ウェルパフォーマンス」。そっちの方向性でなければといけないと思っています。

これまでは技術をより専門的に高めることばかり追いかけてきたと思うんですが、もうこれほどレベルが高くなってきたということは、そういうことは当たり前になっていて、その上にプラスされていなければ次はありえないですね。

陶山氏: ブランド論でいう「ベネフィット」には3つのレベルがあって、機能的な便益と情緒的な便益、それに自己表現的な便益がブランドを支えていると言われているんですね。
例えばシャンプーでいうと、フケやかゆみを防止するのは「機能的便益」で「情緒的便益」というのは、爽やかなとかスカッとするといったこと。

「自己表現的便益」とは、モデルに憧れるというような、自分を表現するアイテムツールとしてそのブランドに期待するということなんですね。 ファッションでいうと、恐らく機能的便益としての品質や性能の部分は、基本的に他とあまり変わらなくなってきていて、そこにどう付加価値をつけるかが重要になると。

十三氏: ええそうですね。心理的な効果。ここが戦略の中で重要だと思います。ファストファッションが今非常に広がりを見せていて、この流れはしばらく続くとは思いますが、ファッションには流行現象というか、ある程度行ききって頂点に達したときにはまず、対極になるものが潜在的にフツフツと出てくるというのが特徴なんです。
陶山氏: ライフサイクルでいう、導入期から成長期になり衰退するときには、もう次のものが出てくるということですね。

十三氏: いえ、衰退期ではなく成長期・成熟期の時にはすでに、次の新しいものが出番を待っているんです。それをどう仕掛けていくかを考える。それが非常に特徴的なことですね。

なぜそうなるかというと、人間にとってファッションというのは、最も動物的なものに近いことなんです。食べることと同じで例えばお肉ばっかり食べていると、やはり野菜を食べたくなりますよね。逆に野菜ばかりだと肉もたまには食べたくなる。これはもう自然な欲求なんですね。その要求のサイクルをファッションの人たちはうまく捉えているんです。

スリムでボディを意識したようなタイトなラインが流行っていれば、それがピークに達した時には必ずゆるやかなラインのものが出てくるという。つまり対極にあるものが必ずクルクル廻っている。ここが非常に面白いところですね。


 

 

 
 

 

2013/01/16

ブランド対談 #08

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