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2020年11月(179回)度大阪第6回フォーラム&OMA秋季特別セミナー開催レポート

2020年11月度(通算179回)大阪第6回フォーラム&OMA秋季特別セミナー 開催レポート
WITH コロナ時代のグローバル化とDX・イノベーション

一般社団法人 ブランド戦略経営研究所では、「大阪第6回フォーラム」および 一般社団法人大阪能率協会「OMA秋期特別セミナー」を11月30日(月)にオンラインで開催いたしました。テーマは「WITH コロナ時代のグローバル化とDX・イノベーション」です。

冒頭陶山理事長から、一般社団法人ブランド戦略経営研究所の概要と本日のフォーラムの解題提起、つづけて各3名の講師の方々からご講演いただき、その後4名でのパネルディスカッションを行いました。

 

◇主催者開会の挨拶・オープニングスピーチ
一般社団法人ブランド戦略経営研究所 理事長 陶山計介

陶山理事長:私たちブランド戦略研究所は、トップマネジメント、マーケティング、広告、広報、知財などのビジネスに役立つオールジャパンの全く新しいシンクタンクであり、2002年設立されたブランド戦略研究会を、2012年に一般社団法人化、来年2021年1月に10周年を迎えるのを機会にブランド戦略経営研究所と名称変更しました。

マーケティング戦略と知財戦略を基軸にしながら、人材開発・営業・生産・研究開発・財務戦略などの機能戦略を連携させたトータルなブランド戦略経営の推進を目的として、次のことに取り組んでいます。

  1. ブランド戦略に関する日本を含む世界の調査・研究・情報収集活動
  2. ブランド戦略に関する研究会・セミナーなどの開催を通した啓蒙活動
  3. ブランド戦略やマーケティング、知財などに関する出版・広報活動
  4. ブランド戦略に関する内外の諸機関との連携・提携・交流
  5. ブランド戦略等に関する補助金その他の各種申請及びこれらに関する他者に対する支援

本年早々に起きた新型コロナウイルスの感染拡大は未だ収束のめどがたっていません。このような状況で、再開が期待される新たなグローバリゼーション、またIoT、ビッグデータ、AI、ロボットなどをベースにしたイノベーションやデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation: DX)の動きが加速しており、生活者のサイドではコミュニティ・ソーシャル価値や顧客体験(Customer Experience)の重視などに象徴されるSociety 5.0=超スマート社会への取り組みが進められています。こうした私たちのビジネスや身近な生活を取り巻く今日の環境のもと、「WITHコロナ時代のグローバル化とDX・イノベーション」が本日のテーマです。

 

本日は3名の講師の方からお話をいただき、パネルディスカッションを通じて本テーマを深めていきますが、トピックスとしては次の通りです。

 ①近年台頭してきた一国主義では解決できない世界的広がりの中での未曾有の事態を打開するための新しい国際的な保健医療連携や経済協調の確立とグローバリゼーションのあり方を再考する。

 ②健康や安全・安心を第一にしながら社会経済活動を再建する上で DX=ビジネスにおけるイノベーションやCX=コミュニティ価値・ソーシャル価値の意義や役割を考える。

 ③今般の新型コロナ感染症(COVID-19)の中でも経営が好調で元気な会社とその秘密を探ることによって在阪の中小・中堅企業に元気と活力を提供する。

 

アメリカに目を転じれば、バイデン次期政権への移行により、トランプ政権下の反グローバリズム(偏狭な自国優先主義や覇権主義)からの政策転換がはかられようとしています。しかし一方で、新型コロナウイルス感染症の猛威は衰えず、家族や親せき、友人と盛り上がりをみせる11月の感謝祭も、今年はその賑わいも影を潜めています。

また2021年の世界経済フォーラムWEFが開催するダボス会議のテーマは「グレート・リセット」。世界規模のパンデミックは、私たちがいかにお互いが繋がりあっているかを証明しました。が同時に、グローバル・ヘルスの危機は、社会的結束、機会均等、包摂性の欠如といった古いシステムの非持続性を露呈する形となりました。WEF創設者・会長のクラウス・シュワブ氏は、旧来の非持続的なシステムをリセットし、今後50年の課題に対処できるように、今後グローバル社会のすべてのステークホルダーが関心、目的、行動を共有できるよう社会システムを作り直す必要があると述べています。

つながることをキーワードとした「第4次産業革命」は、いわゆるSociety 5.0につながるConnected Industriesをもたらしました。必要な時に必要なものが提供される世界(家電や電子産業、住宅業界、食品、医療、金融、サービスなど生活のあらゆる分野がネットワーキングされるなか)で、「つながる製品」「つながる企業」「つながる生活者」が台頭。この中で特に、「破壊的なイノベーション」をどう進めていくのかが、今後の大きなテーマとなります。

 

2020年9月、大阪能率協会見学研修部の菊本部長と共に、NECのDXテクノロジーを体感するためにNEC Future Creation Hub KANSAIを訪問しました。そこでは生体認証や映像解析をはじめとするDXを支えるテクノロジーが様々な形で展開。特にNECの生体認証技術は世界トップであり、AIを用いた顧客対応の省力化、ARマーケティング(多言語表示)、感情の見える化など、DX推進の技術開発が進められています。

このような中、NECでは、次のようなビジネスや組織の変化が必要だと提言しています。

  1. 働き方の変化:テレワーク、企業イベントのオンライン化、リモートによる製品開発など
  2. 顧客行動の変化:インターネットバンキングやデリバリーサービスの利用拡大など
  3. 事業継続性の変化:緊急時のコア業務継続の仕組みづくり、サプライチェーン見直しなど

 

私たちが提唱する「Brand 5.0:DX&CX時代と“ホリスティック(統合的)・ブランディング”」は、これまでと同様の外向きのブランディングと、企業内部のブランディング、さらに知財を含めたホリスティックなブランディングを指しています。当研究所では2030年のDX実現に向けて理論的・政策的な課題提起としてまとめていきます。そしてWITH コロナ、グローバル、DX・イノベーションの時代におけるブランド戦略に関してBSIが考えるべきことは次の通りです。

  •  WITHコロナ時代のDX&CX、ビジネス・イノベーションやマーケティング、さらにブランド戦略の基本枠組みや方向性、内容
  •  “NEW NORMAL“において変わるもの、変わらないもの。またその理由
  •  ビジネスや生活に活力を与え、社会を元気にさせる“攻めのブランディング”とそのコミュニケーション。ブランドに対する安全・信用・信頼の役割、コミュニティ機能とは何か
  •  ビジネスを革新に導く、チャレンジ精神に燃えたリーダーやヒト、それを醸成する組織の“熱量”
陶山計介 当研究所理事長

Profile:一般社団法人ブランド戦略研究所理事長。関西大学商学部教授。京都大学博士(経済学)。『ブランド・エクイティ戦略』(共訳著、ダイヤモンド社)、『日本型ブランド優位戦略』(共著、ダイヤモンド社)、『よくわかる現代マーケティング』(共編著、ミネルヴァ書房)などブランド・マーケティング研究の第一人者。日本商業学会元会長。

 

 

◇第1講「withコロナ時代のグローバリゼーション」
明治大学経営学部教授/グローバル・マーケティング研究会代表世話人 大石芳裕氏

大石講師からは、withコロナ時代のグローバリゼーションとして、グローバリゼーションの今後の展望と共に、これからの企業経営の在り方や社会全体、人間のマインド・生き方の世界的な変化についてお話しいただきました。

大石講師:最近は調査に行くことができないが、これまでグローバルに歩きまわり、年平均6~10カ国を訪問し、日系企業・現地企業など40~50社を視察・インタビューしてきました。また国内では、週2~3回、企業幹部と面談し、意見交換や海外進出相談を行っています。

合わせて「グローバル・マーケティング研究会」を毎月無料で開催しています。2020年11月25日現在、会員数2939名。ビジネスパースンが8割強、研究者や院生・学生も参加して、毎回200名前後で「60分の報告、60分の質疑応答」として、徹底的に議論するスタイルで開催し、実践的なことを学び、研究者・学生と議論を交わしながら、実務に活かしてもらうことで、日本企業の国際競争力を強化することを目的としています。

新型コロナの影響から、現在ではグローバリゼーションは閉塞しているが、長期的にはグローバリゼーションはさらに進展するものと考えます。資源や情報の収集、人材の調達も含め、このグローバリゼーションの波に飲まれない企業はもはやあり得ず、自身の経営と関連付けて、グローバリゼーションの考え方やグローバルな視野を身に着けていく必要があります。

新型コロナの影響はアメリカ・ヨーロッパ・アジアそれぞれの地域で異なります。またユーロモニターのレポートをみるとトランスポート(輸送)やレジャー、ホテルなどの分野で大きな影響を被っていることが分かります。過去には、資源危機(石油危機)、金融危機(世界金融危機)、供給危機などがあったが、今回の新型コロナは「需要危機」と呼べるものであり、人の移動が無くなり、消費が落ち込んだことが、製造・生産を含めた全体に影響を与えています。その影響の深度や期間はこれまでとは大きく異なるため、財務的な備えとともに、ビジネスのあり方自体も見直す必要があります。

過去の大規模な感染症の流行が及ぼした社会変革の歴史を鑑みれば、今回の新型コロナウイルスは、単に企業経営の在り方だけではなく、社会全体や人間のマインド・生き方にも大きく影響を与えるものです。世界的に見れば、SDGsやESGへの関心は明らかに潮目が変わり、企業の取り組みは充実し、これを支えるミレニアル世代、Z世代の意識も非常に高い。一方で日本国内のミレニアル世代、Z世代は、この世界的な潮流から少し外れているので注意が必要です。このような状況を見極めて企業は今後の商品開発・企業経営に取り組んでいく必要があります。

グローバルに対しては次の2つの見方があるが、どちらか一方だけの見方は誤りであり、現実はボーダーレスとボーダーフルの状況がそれぞれ存在し、そのせめぎ合いの中にあります。

  1. ボーダーレス派:競争・カネ・情報がボーダーレスであり他も同様にボーダーレスだと考える
  2. ボーダーフル派:企業・モノ・ヒトがボーダーフルであり他も同様にボーダーフルであると考える

カネ・モノ・ヒト・情報・国境の垣根は低くなりボーダーレスに近づいているものの、現実にはこれら国や地域の境界が立ち現れるため、グローバリゼーションの捉え方は複雑かつ難しいものとなっています。何がグローバル化しているか、その主体を捉えることが重要。このような難しさ・複雑さを抱えながら、グローバリゼーションには次のようなメリットやデメリット・問題があります。

  • メリット:労働の節約/資源の有効活用/景気変動・リスクの平準化/グローバル・マインドの醸成
  • デメリット:貧富格差拡大/産業空洞化/文化の衝突/伝染病や感染症の蔓延(※貧富格差拡大や産業空洞化は、国内政治の問題であるとも考えられる)

今般の新型コロナウイルスにより、一時的にはグローバリゼーションは停滞(企業・モノ・ヒトの物理的移動の制限)し、ボーダーを再認識することで自国第一主義が強化され、感染症の拡大・蔓延というグローバリゼーションのデメリットが目立つことになりました。しかし今後もグローバリゼーションは進展し、今回のパンデミックから世界連携と新常態が生み出されています。その新常態は次のようなものです。

 

(1)テレワーク:
テレワークは世界的に普及・進展するも、日本国内ではまだそれに至っていません。重要なことは、テレワークが経営全体や社会全体にどのような影響を与えていくのか、ということ。テレワーク進展のためにDXは不可欠であり、また日本の典型的なメンバーシップ型経営から、ジョブ型雇用・成果主義的経営と組み合わせた、ハイブリット型経営へと変化する必要があります。そのためにデジタル化、オンライン化への移行は必須。つまり、経営の全体的な改革がなければ、テレワークの普及・進展はあり得ません。
 

(2)eコマース:
市場規模として最も大きいのは中国、次いでアメリカであり、比率として高いのは韓国やイギリス。日本企業が関係する東南アジアではその比率は低いものの、成長率は高い。ECの抱える様々な課題(想像以上にコストがかかる、日本語サイトの単なる翻訳サイトでは通用しない、プラットフォーム・オフラインの融合が不可欠など)にチャレンジしながら、今後は越境ECをチャンネルのひとつとして認識する必要があります。

(3)ミレニアル世代:
日本、アメリカ、中国、タイ4か国のミレニアル世代の意識調査を比較。世界では、ジェンダー問題、途上国への支援など、社会問題に関心が高く、これらを意識した事業が行われています。アジア(中国、ベトナム、タイ等)においても、“ドメスティック”ではなく、“コミュニティ”を大切にしながら、世界的な課題、問題に対応するためのコミュニケーション戦略・共感戦略が必要とされています。
 

(4)サプライチェーン・マネジメント(SCM):
SCMは、供給業者から最終消費者までのサプライチェーンに対する統合的な見直しを行い、業務プロセス全体の最適化と効率化を行うための経営管理手法。新型コロナの影響を受け、今後は国内あるいは一つの地域における最適化・効率化を考える必要があります。このモデルの事例としてトヨタのRESCUEがあります。RESCUEの構築により、新型コロナ下でもトヨタは収益低下を比較的抑えることができました。ただ単に分散生産(マルチソース)をするのではなく、仕入れ先との信頼関係の構築がカギとなります。
 

講師:大石 芳裕 氏
明治大学経営学部教授/グローバル・マーケティング研究会代表世話人

 Profile:グローバル・マーケティングを専門とする。若い頃は理論研究中心であったが、近年は現場主義の研究を続けている。国内で企業幹部へのインタビューをしたり事業相談を受けたりしながら、年間40社ほどの海外現地法人を回っている。ほぼ毎月開催している「グローバル・マーケティング研究会」の会員数は2900名を超え、毎月200名前後が集まり、「60分の報告・60分の質疑応答」で日本企業の国際競争力強化を議論している(新型コロナで中断中)。『実践的グローバル・マーケティング』(ミネルヴァ書房、2017年),『ミレニアル世代事業戦略』(白桃書房、2020年)他著書多数。日本流通学会元会長,多国籍企業学会元副会長など。

 

◇第2講「物流に関わる人と生活者を幸せにすること」
センコー株式会社(SENKO Co., Ltd.) 取締役 専務執行役員 事業政策推進本部長
杉本 健司氏

杉本講師からは、コロナ禍以前から抱えている物流業界の課題と現状を踏まえながら、Withコロナ時代における物流に関わる人と社会に貢献するDX構想ついてお話しいただきました。

杉本氏:センコーのDXは今年ようやく構想が固まったばかりで、DXに向けた取り組みは非常に遅れているものの、これまで2年間におよぶ試行錯誤と共にセンコーのDXの方向性や考え方を紹介します。

 

センコーグループホールディングスの事業紹介・歴史

センコー株式会社の親会社であるセンコーグループホールディングスは、物流を主軸として今年で創業103年を迎えます。海運から開始した物流事業を中心に、商業事業、ビジネスサポート事業、ライフサポート事業など多岐に渡る事業展開により成長してきました。保管、配送、流通確保、物流情報処理にも対応する複合機能を備えた大型物流センター(PDセンター)の全国展開、また請求書の発行やコールセンターなど業務の幅を広げながら、アパレル・医療・医薬・食品・精密機械等の分野にも顧客を拡大。現在、物流センターは国内外で360万㎡以上、業界トップクラスの規模を有します。ファッション物流や重量物輸送、冷凍・冷蔵物流に独自のノウハウを持つ企業がセンコーグループに加わりながら、商事・貿易事業と物流事業との相乗効果も現れています。現在では、中国、韓国、東南アジア、中央アジア、オーストラリア、北米地域にも事業拠点を有し、顧客の海外事業サポートを行っています。

 

コロナ前後における物流の状況と危機

コロナ禍では店頭からトイレットペーパーが無くなりました。しかし実際は倉庫に在庫があり、BtoBの輸送が追いつかなかったために、店舗まで商品が行き届かないという事態に。ラストワンマイルである個人向け物流(BtoC)は、国内物流全体の96%を占める企業間物流(BtoB)に支えられており、この強化が本当の課題だといえます。

さらに言えばコロナ以前の2018年時点で、すでに物流は危機を迎えていました。物流業に従事する者(特にドライバー)の減少・高齢化、また物流企業の倒産や廃業の進行。このような状況が続けば、日本全体の物流サービスレベルは低下し、価格は上昇してしまうため、物流業界全体として手を打たなければならない状況でした。

このような状況に対して、賛同企業・団体間で、①トラック輸送生産性向上・効率化、②女性や60代以上も働きやすい環境の整備を図り、安定的な物流確保を目的とした国土交通省が推進する「ホワイト物流」運動(2019年~)や、ドライバーの処遇改善を目指す国土交通省「運転者職場環境良好度認証制度(旧名称・ホワイト経営)(2020年~)が開始されています。ホワイト物流は、2020年10月末時点で1093社(内559社が物流会社)が賛同企業として参加するなど制度的な進展をみせはじめています。

 

センコーにおけるDXの取り組み

DXの取り組み背景にある物流業界の課題は、慢性的な労働人口不足。これまでの人に頼った仕事の仕方ではもはや限界。経団連のDX方針にもあるように、デジタル技術とデータ活用により、産業・組織・個人の大転換を図りながら、既存事業の変革を実現し、社会や顧客の課題解決を図ることを当社でも目指すこととしました。

しかし、DXをはじめるにあたって外部機関に現状の評価を依頼してみると、当社のデータマネジメント成熟度の評価は芳しいものではありませんでした。各所で機械化・システム化は進んでいたものの、事業所や顧客ごとに情報が別々に管理されており、横串で情報共有・統一がなされていない状態でした。

2020年にはDX推進部を設置して取り組みを開始。DXによる事業改革は、下記のように現在の事業の在り方を基本から見直し、デジタル化の推進により事業の強化・高度化を目指すこととしました。

  1. 物流拠点前提のオフィスワーク → リモート前提のオフィスワーク:
    非常にアナログな物流センターの事務をデジタル化
  2. 顧客ビジネス個別最適の物流 → サプライチェーン全体最適の物流:
    仕事内容の標準化、全国展開
  3. 荷主への物流サービスを提供 → 荷主事業への支援サービス:
    協力会社、輸送経路・輸送モードの見える化・強化

お客様にとって物流はブラックボックス。このような物流情報を共有し、見える化し、「情報ベース型物流」とすることで、コスト・在庫の削減、安定した品質管理、物流ロスの減少などへつなげることで、社会・経済全体への貢献をしていきます。何よりも物流のロスの解消は、持続可能な社会への貢献となります。また「必ず届ける」という社会との約束を、デジタル技術を駆使することにより果たしていく。これがセンコーの役割だと考えます。

 

当社のDXでねらう真の目的と想い

DXはデジタルでなく、人。次のような見せかけの施策に陥っていないか、経営者は、厳しい目でチェックすべきです。DX変革を実現する鍵は、今を捨て新しく造る「経営者の覚悟」と、またその改革の実行を担う「従業員のチャレンジスピリット」が何よりも重要。センコーが大切にしてきた「お客様の立場に立って」「最高のマナーでお届けしたい」というDNA、また20年前から掲げていた「情報で流通、社会を動かす」という想いを、社員が受け継いでDX変革を実現したい。

労働環境から敬遠されがちなこの業界において、DXの実装により物流業から過重労働を無くし、ヒューマンエラーを無くし、品質クレーム・事故を無くしたい。その結果として、仕事が楽になり、生産性がアップし、賃金が上がることで生活が豊かになる。これを通じて私たちの仲間を増やしていきたいという想いがあります。コロナ禍の環境下で物流業界の仲間は本当に苦労しているが、このコロナ禍の状況をチャンスと捉えて仕事の仕方を変えていきます。DXへの取り組みを通じて、奇跡のようなイノベーションを生み出しながら、夢のある未来をつくり、物流業界全体を盛り上げて参ります。

 

講師:杉本 健司 氏
センコー株式会社(SENKO Co., Ltd.)取締役専務執行役員 事業政策推進本部長

 Profile:学生時代、体育会ヨット部に所属。ヨットの魅力や楽しさに惹かれ多くの時間をヨット仲間と湘南の海で過ごす。1989年 センコー株式会社入社。トラック輸送事業所よりキャリアをスタート。物流業務の経験を積む。2010年 神奈川支店支店長就任、東地区の物流業務を指揮する。2015年 センコーグループの中核を成す物流会社である「センコーエーラインアマノ株式会社」代表取締役社長就任。2019年より現職。

 

◇第3講「Withコロナ禍におけるクレベリンによる空間除菌と三層防衛及び海外展開について」
大幸薬品株式会社 執行役員海外事業部/感染管理事業部担当 
山下 充洋 氏

山下講師からは、性質の異なる製品それぞれのマーケティングの変遷を確認しながら、Withコロナ時代における国内外の事業創造、事業展開の手法や戦略についてお話しいただきました。

 

山下氏:コロナ禍における日本国内での感染管理事業の展開、また海外での事業創造の方法・戦略について具体的な事例を交えてご紹介します。

ラッパのマークの正露丸は100年前より販売を開始。一方、コロナ禍においては二酸化塩素を使った感染管理、感染予防を目的とする「クレベリン」の売り上げがここ数年伸びてきています。

2つの製品の事業業績(売上比率)をみると、正露丸を扱う医薬品事業は全体の40%、一方クレベリンを扱う感染管理事業は60%であり、現在当社は“クレベリン”の会社になりつつあります。

クレベリンは15年前に出した商品であり、空気中に浮遊している/物体に付着している菌・ウイルスを不活性化させて除去できるもので、総合除菌ブランドとして育てたいという想いから始まりました。2018年にパッケージを含めたブランディング方法のリニューアル中に、Covid-19によるコロナ感染症が拡大。クレベリンのガス(二酸化塩素の気体)がCovid-19のたんぱく質とくっつくことで、感染を阻止するという論文(弊社プレスリリース・2020年10月15日発信)を発表すると、エビデンスを持って感染予防を説明できる商品となり、クレベリンの認知度も高まりました。
 

発売当時の15年前、クレベリンはBtoBで流通していました。徐々に問屋での扱いが増えていく中で、ノロウイルス需要・インフルエンザ需要が出てきたため、一気に成長。しかし新しいカテゴリーであり、消費者庁から各企業に指導が入り、当社は一部表示に関する指摘を受けたが、他社ブランドは廃版、撤退などにより市場は一気に低迷した結果、マーケットそのものは小さくなったが、生き残った当社は市場を寡占。その後SARS、MERSが続き、改めてマーケティングを見直し、その方針として次の2点を定めて事業展開を進めてきました。

1.デザイン変更  2.ターゲット生活者への集中

「商品を売る」ことから「コンセプトを売る」ことへシフトし、特に、「妊婦」や「5歳以下の子供を持つ親」、「受験生をもつ親」など、徹底的にターゲットを縛りこみ、これらの人にとって分かりやすいデザインとコンセプトを伝えるマーケティングを行ってきました。

 

新しい「空気」の価値観を売る

一昔前は、「安全」と「水」はタダでしたが、今やこれらは買う時代。この時代において、受け身ではなくアクティブに「きれいな空気を作る(空間除菌)」というコンセプトを設定。このような新しい「空気」の価値を売りたいと考えています。30年後には、安全や水のように、「感染症リスクのない安全・安心な空間を買う時代」がくるのではないでしょうか。

 

大幸薬品が提案する三層防衛

新しい「空気」の価値を売るために、当社では3層の感染予防対策を提案しています。

①物体防衛、②空間防衛、③体内防衛

①手の触れるモノに対する予防には意識が払われる一方、意外とおろそかにされてしまうポイントである②空間防衛(空気中に滞留している菌・ウイルスに対する予防・管理)を徹底してやるべきだと提案。
 

それでは新しく提供するこの「空気」の価値観をBtoBではどのように表現・浸透させていくのか。私は、BtoB法人営業について3つの柱を立てています。

  1. 社会貢献(投資)・Funづくり (Social Product Placement:SPP):影響力のある医療機関はじめ学校等に数十万個のサンプルを配布。製品を使ってもらう
  2. 使用用途・仕様場面拡大・足元の売上 (Taiko Channel Partner:TCP):サンプル体験者が様々な場面で使えるよう、流通網を拡充させる
  3. BtoB技術営業:お客様にあった使い方、導入方法、マニュアル作成を通じてチャネルを開拓する

社会貢献をしながら、売上もつくり、チャネルを開拓する。この3つを相互に影響・循環させることで将来のブランドを作るための事業展開を行っていきます。

 

海外事業の自社展開

正露丸で社名の通用する、中国・香港・台湾では自社100%の現地法人を設定し、その他のアジア圏では現地代理店を設定しています。社名が通用するため日本国内と同じマーケティングを行っているが、昔の様に現地市場を開拓する、特に流通網を作ることは非常に時間がかかるため、ECを利用しています。まずは越境ECを入り口として、現地ネットECに入りながら知名度を上げていく。そこでお客様が付いた後、現地代理店を通じて店舗に製品を入れて販売網を確立させます。


またクレベリンの場合、海外の代理店に流通網の構築を全面的に任せていました。しかしその代理店では、政府や国営企業といったBtoGとの交渉は長けているものの、BtoC商品を売る細やかな能力がないためにBtoGチャネルだけを任せ、それ以外のBtoCやBtoBについては当社で引き受けることとしました。一つひとつのチャネル・流通ごとに代理店を定めて流通網を確保し、上から下まで全業態・全チャネルの制覇を目指すこと。製品の信頼や知名度が高まれば、自信をもってBtoBやBtoGにもいけます。この流通網を構築する中でコロナが発生したため、一気に店頭に商品が並び流通が拡大しました。
 

現在のBtoCはまさに氷山の一角。まだ見えていない部分が大きく、ここにアプローチするためにBtoBへのアプローチを行います。BtoBでの信頼が大きくなるほど、製品に対する認知度やバックグラウンドが深まり、BtoCでの信頼も高まります。ECを使いながらBtoCで宣伝し、BtoBで稼ぎ、5,6年先のブランドデザインを描くこと。

日本で成功しているものは、海外でも必ず成功すると信じています。ニューノーマル、Withコロナの時代に合っては、変わらないことが最大のリスクです。コンセプトや切り口を磨きながら、自信を持って海外事業や新しい事業展開に挑戦してほしいと思います。

 

講師:山下 充洋 氏
日経ビジネス総研客員研究員
大幸薬品株式会社 執行役員 海外事業部・感染管理事業部担当

Profile:1987年 ㈱マンダム入社、翌年よりシンガポール駐在、マレーシア兼務。その後タイ駐在、インドネシア駐在と21年間一貫して海外駐在生活を送る。2008年 本社に戻り海外事業担当執行役員を経て2012年退社。2012年10月 森永製菓㈱入社、海外事業担当執行役員、取締役上席執行役員海外事業本部長を経て2018年6月同社退社。2018年7月 日経ビジネス総研客員研究員(現任)。2019年1月 大幸薬品㈱顧問、同4月執行役員海外事業部担当。2020年10月より海外事業部・感染管理事業部担当。

 

◇パネルディスカッション


陶山理事長(右)、大石氏(中央右)、杉本氏(中央左)、山下氏(左)

陶山計介当研究所理事長(関西大学教授)をファシリテーターとして、講師である大石氏、杉本氏、山下氏とともにパネルディスカッションを実施。WITHコロナ時代で変わる・リセットされるべきこと、変えなくて良いこと、グローバルあるいはローカル、コミュニティにおけるサプライチェーンの構図の変化、これら変化に即した今後のビジネス、経営、イノベーションの在り方や考え方など様々な議論が展開されました。また参加者からは、コロナ禍における人と人との交流の難しさ、営業活動や新規顧客の獲得方法、専門家へのアプローチなどの質問や感想があり、活発な質疑応答がなされました。

 

◇閉会の挨拶

最後に、一般社団法人大阪能率協会異業種交流会部長 窪田憲濶氏より、講演から特に感銘を受けた3点、①現場主義の視点からのグローバルマーケティング研究とその動向、②暮らしと産業を支える最適な物流ソリューションの変遷や今後の方向性、③性質の異なる製品に関するマーケティング戦略の変遷や事業展開の手法についてお話しいただき、講師、参加者の皆様への謝意が述べられ、無事閉会となりました。

 

◇総括

今回の大阪第6回フォーラム&OMA秋季特別セミナーは、「WITH コロナ時代のグローバル化とDX・イノベーション」をテーマに、お三方それぞれの分野で尽力されている活動についてお話しいただきました。講師の方をはじめ多くの皆様のご協力により本フォーラム・セミナーを盛況のうちに終えることができました。ご講演いただきました3名の講師の皆さんには厚くお礼申し上げます。

 

2020/11/30

2020/11/30

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