ブランド対談 #10

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ブランド対談 #10

「食文化をクリエイトする」老舗外食ブランドのイノベーション vol.3

食文化の創造とイノベーション


陶山氏:  ある高級アイスクリームのメーカーさんにも、ライバルは同業他社ではなく、コンビニのスィーツだと伺ったことがあります。外食であるけれど、中食の枠を越えなくてはいけない。いわゆるボーダレスというところなんでしょうね。

ボーダレスというと、今海外でも展開されてますが、たとえば中国ですと中華料理は本場ですが。

文野氏: 中華で勝負していないですね。ジャパンチャイニーズといって、6割のチャイニーズと4割の日本食をフュージョンさせた業態で進めています。

陶山氏:  なるほど。日本の中華料理もジャパナイズされていますから、逆に日本的要素を持つことで差別化になりますね。後発で現地参入する場合、日式に魅力に感じて評価されるケースも多いですから。
文野氏: イタリア料理もフランス料理もそうですね。本場と違い日本化していますから。そういうことなんでしょうね。

陶山氏: カレーの場合も、中国ではカレーといえば、ルーではなく粉末がいいとか、ごはんにかけずにスープのように食べるとか。そういった現地での違いに合わせたアレンジが必要になる。でも日式の食べ方も評価が高いので、そのエッセンスをどう残すか。

文野氏: シンガポールではそれがうまくいきました。我々がプロデュースするよりも、長年現地に住む日本人のスタッフが、いろいろ決めて進めていきましたから。非常に的を得たメニュー構成になっていて、売上も上がっています。

陶山氏:  今後はどのくらいの海外展開を予定されていますか?

文野氏:  まずは100を一つの基準にしていますが、500店舗くらいは考えています。でも今はまだ、どの国に重きをおいて出店しようか決めているところですね。ひと先ず6カ国に出店しましたが、それぞれの反応を見ながら、一番感触のあるところに集中しようと考えています。
  陶山氏: ロジスティックス含めコスト的にも、ペイできるエリアを決めて集中する、ドミナント出店でないと意味が無いですからね。今はテストマーケティングの段階なんですね。

文野氏: ええ。でも明らかにお客さんが若いことに、日本との違いを如実に感じますね。10~15歳は違います。

陶山氏:  ベトナムだと平均年齢が27,8歳ですから。

文野氏:  まだ30歳前ですか。それは若い。

陶山氏:  人口構成もピラミッド型になっていて、パワーやバイタリティが満ち溢れていますよね。街にも車やバイクが多くて、それを見ているだけでもパワフルな力を感じますね。

逆に日本は高齢化が進んでますが、高齢者向けといっても「お年寄り向け」というとダメなんですよ。「自分はまだ若い」と当該のお客様から敬遠される(笑)
年齢ではなくマインドの問題ですから、そういうターゲティングされることに対して抵抗感があるんです。私もそういう域に達しつつありますけど、いつまでも学生と一緒に若者ぶってますが(笑)

文野氏:  老けようがないですよね、先生は(笑)

陶山氏: こうしていろいろな方や学生と話をすることによって、時代の風を感じることに生きがいを見出していますからね。やはり研究室に閉じこもっているだけでは老け込んでしまいます(笑) 社長も、時代の風を感じるというか、トレンドを体内化するということに関して、何か取り組んでおられますか?

文野氏:  やはり買いたい物、食べたいものを消費していくことが一番ですね。そのきっかけとして、マラソンや音楽、ダイビングなどのコミュニティに意識的に入って、若い人達と一緒に消費することでしょうか。やはり好奇心ですね。この好奇心があるうちはまだ大丈夫かなと(笑)

陶山氏:  常に現状に満足せずチャレンジャブルで。それは元々持っておられたんですか?
文野氏:  元々というより「新しい価値を創造する」という、そもそものミッションが会社にあって社長をやっていますので、なんとかそれを実現したい。

それがどんどん時間が迫ってくるという気持ちの中で、もう1ミリの情報も無駄にしたくない、見過ごしたくないと、やたら視察に行ったりしていますね。

陶山氏:  新しい価値を創造する。そういう意味で社名の「アンド」なんですね。「アンド」というのはエンドレスですからね。御社の「おなかいっぱいの幸せ」にもその広がりを感じます。

文野氏:  今こうした成熟社会ですから、フルフルのおなか満タンというよりも、自分の価値に見合った満足が「おなかいっぱいの幸せ」に置き換わってきていると思っています。
今小さいのに高い高級チョコレートや、1粒1000円のイチゴがあったりしますね。1000円というのはそんなに高い金額ではないけれど、1粒となると高い。でも飛ぶように売れていると。

そういう自分の満足が幸せというところに、日本の場合は価値観が変わってきています。そこに対して新しい価値を提供できるよう、さらにクリエイティブな集団にもっていかないといけないと非常に感じています。

陶山氏:  マズローの欲求5段階説のように、やはり物質的な豊かさをベースにしながら、その次のプラス部分をクリエイトすることが、「おなかいっぱいの幸せ」ということなんでしょうね。その幸せというのは時代によって、或いは地域によって違ってきますから、それは何かという答えは一つにしないことが良いんでしょうね。

そこが「アンド」であるという。お客様ご自身が、これまでのバックグランドや将来の展望の中で、「あ、これがアンドなんだ」ということを見つけ出すことが喜びになるんじゃないかと思いますね。

文野氏:  本当に仰る通りです。そうなんだそうなんだって、整理していただいたような(笑)

陶山氏:  それぞれの業態の中で見つけ出せる。そういう提案ができれば、お客様の琴線に触れることができますね。常に刺激を提供して、実体験として体感していただく。そういう意味では、商品やサービスや店舗というのはそのためのツールであって、手段でしかないのかもしれませんね。そこを通じてどんなバリューを提供できるかですから。

 

PROFILE

 

 
陶山 計介 文野 直樹
Keisuke Suyama Naoki Fumino
関西大学商学部教授 イートアンド株式会社
一般社団法人 ブランド戦略経営研究所 代表取締役
1950年 岡山県生まれ

京都大学 大学院経済学研究科
博士後期課程単位取得。博士(経済学)

研究分野ブランド・マーケティング。

学会・研究会活動
日本商業学会前会長
日本広告学会元理事
日本広報学会元理事
一般社団法人 ブランド戦略経営研究所理事長

主な著書・訳書
『ブランド・エクイティ戦略』
(共訳 ダイヤモンド社 1994年)
『ブランド優位の戦略』
(共訳 ダイヤモンド社 1997年)
『バリュースペース戦略』
(共訳 ダイヤモンド社 2004年)
『マーケティング戦略と需給斉合』
(中央経済社 1993年)
『日本型ブランド優位戦略』
(共訳 ダイヤモンド社 2000年)
『マーケティング・ネットワーク論』
(共編著 有斐閣 2002年)
『大阪ブランド・ルネッサンス』
(共著 ミネルヴァ書房 2006年)等

常に現場に目を据え、トヨタ、リクルート、JH、ハウス食品、イズミヤ、大阪府等多数の企業、各種団体の幹部研修も行い、産学交流を推進している。 文科省、経産省等の専門委員や大阪ブランドコミッティ・プロデューサー等、学外活動多数。

英国エジンバラ大学マネジメントスクール客員教授(2002年)
1959年 大阪府生まれ

1980年 大阪王将食品株式会社入社
1985年 同社後継社長に就任
1993年 平成5年9月冷凍食品販売を開始
1996年 株式会社大阪王将に社名変更
1997年 「よってこや」ラーメン事業展開開始
2002年 イートアンド株式会社に社名変更
2003年 「大阪王将」関東に進出
2004年 海外進出「大阪王将」香港1号店
2006年 新業態「太陽のトマト麺」展開開始
2011年 大阪証券取引所ジャスダック上場
2011年 大阪王将300店舗達成
2012年 東京証券取引所市場第二部上場
関西大学
陶山研究室
http://www2.itc.kansai-u.ac.jp/~suyama/

一般社団法人 ブランド戦略経営研究所
http://www.brand-si.com
URL:
イートアンド株式会社
http://www.eat-and.jp/

Blog:
「おなかいっぱいの幸せを」
http://blog.goo.ne.jp/n_fumino/
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2013/03/20